告別

かわいいねこのて、ねこのあし

ブスの呪い

 

 

 始まりは小学校低学年の頃、同じクラスの男の子に「お前ってカバに似てて、ブスだよな」そう言われたのがきっかけだった気がする。その時わたしは自分のことをブスだと思うようになった。自分のことをかわいいとか、かわくないとか、自覚する前にブスだと教えられてしまった。しばらくして中学生の頃のこと。わたしは一重でとても目が細い。笑うと確かに目は無くなってしまうし、目尻が下がる。それを見た男の子が言う「お前って笑った顔、マリモッコリみたいだよな」それを聞いた他の人にも笑われた記憶がある。とても泣きたくなったけど、泣いたら負けな気がして泣かなかった。

 

 中学生の頃はメイクなんて絶対に禁止であったし、高校生はしている子もいなくはなかったと思うが、基本的に禁止だった。

 大学に入ってからはひたすらに自分の顔をいかにメイクでなんとかするか必死だった。そばかすの目立つ肌、どう見ても生えている高さが違う眉毛、ちょっと目があっただけで睨んでいると勘違いされるほど細い目、腫れぼったいまぶた、逆まつげになってるくせに短いまつげ、低い鼻のくせに鼻の穴だけは大きくすることができて、しかも笑いを堪えたりすると大きく開いてしまう鼻、しょっちゅうめくれてしまうくちびるの皮、そして外側と内側で色が違うくちびる、歯並びの悪い歯、目の下から顎までがひたすらに広い顔の余白、バカなくせに頭蓋骨が大きいせいで無駄に大きい頭、自分の嫌いな顔のパーツなんて挙げだしたらきりが無くなってくる。そう、自分の顔の全てが嫌いであるから。

 メイクをしてどうにか誤魔化そうにも限界がある。そしてやっぱり元からかわいい子は羨ましい。当たり前だ、メイクでどれだけ努力をしても、スッピンブスと言われて終わってしまう。

大学の頃、スッピンを見られてしまい、こう言われた。「妖怪細目ババア」死にたくなった。今でもその子に会う度に言われたことを思い出す。自分が気にしすぎと言われたらそれで終わりだが、自分が何年も前から気にしていたことをこうして言われると、死にたくなる。

たぶん、本人は何気ない一言だったんだと思う。それでも私は本気で整形をもっと考えるようになったし、絶対にスッピンを見せることもなく、もう顔が自虐ネタとしていくしかないのかと思った時期もあった。(実際、どう流せばいいのかわからなくて言われた当初は自虐ネタとして使ってしまった時期もあったと思う)

 

実際のところ、メイクをしてかわいくなれたのかというと、そうでもない。1番の欠点であると思っている一重は、たしかにアイプチをすれば目は2倍くらいの大きさになる。でも、アイプチは水に弱く、汗をかくととれるし、伏し目がちになると明らかにわかる。メザイクとかに変えれば?とか散々言われたが、メザイク程度の糸じゃ私のまぶたは二重にできないことが、私が何度も試してわかった。テープも試したがどうにも端っこがめくれてきてしまうのでアイプチと併用することになってしまう。アイプチでガチガチにまぶたを固めることでしか二重になれない、とても残念な目。アイシャドウがどうのとか、そんなのわかっているが、だったら私の目が今の半分になって、腫れぼったいまぶたにアイシャドウを塗っても同じことは言えるのか、と思う。たしかに目が細くてもきれいな人はいっぱいいる。それは切れ長のきれいな目。腫れぼったいまぶたの目が細い人は、とっても微妙。結局のところ、無い物ねだりなのかは知らないが、私の思うかわいい人はみんな二重のぱっちりした目の女の子。私の顔とは程遠い。

いくら努力していい基礎化粧品を使っても日焼けを気にしてもそばかすは消えない。まるで呪いみたいだと思う。いつまで経っても消えない。いっそのこと、肌から顔のすべてのパーツまで全部変えれたらいいのにと思う。整形はしたいが、手術は怖くてできない。整形ほど勇気のいる手術もなかなかないと思っています。もう二重の手術とか自分の顔を自分でやりたいくらいには医者に任せるの怖い。絶対に私の顔は、私が1番綺麗な二重を作れる自信がある。自分じゃできないのに、困ったね。

 

小学生の頃、私をブスだと言った男の子は、中学校の体育の先生になっている。中学生の頃、私をマリモッコリに似てると言った男の子は、大学院まで行ってなにやら研究している。大学の頃、妖怪細目ババアと言った子は管理栄養士の花形と言われている病院に就職し、患者さんに対しての栄養相談をしているらしい。大学生にもなって、よくもこんな人のことを傷つけるようなことを言えるんだなあと思った人間が、患者さんとコミュニケーションを取るだなんてそんなことあるもんだなあと、しみじみ思う。

 

ブスという言葉は、私をいつまで経っても雁字搦めにして離さない。かわいい子を見る度、誰かがあの子はかわいいという度、ひっそりと思い出す。自分に言われてきた言葉を。

いくら自分の顔が嫌いだからと言って、メイクをしても細かいところが気になるから鏡は無理なので、自撮りアプリで加工した自分の顔でずっといてほしいと願うばかりで。

結局、いつまでも過去を気にしているのは私だけということはわかってはいるけど、いつまで経ってもこうした夜に思い出しては悲しくなるのはそろそろやめたいと思う。

 

台風の夜より

 

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